CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング)スラリーは、半導体の製造工程で、シリコンウェハー表面を研磨するために用いるスラリーです。
CMPスラリーは、様々な化学薬品の中にシリカや酸化セリウムなどの研磨剤成分を分散させた組成で、比重差による沈殿や、化学的な凝集体を生じやすいなど不安定な状態の溶液といえます。
スラリー中の成分が凝集してしまい、粗大粒子(LPC:Large Particle Counts, typically>1μm)が発生したり、比重の大きい部分が沈殿したりすることがあり、スラリーを均一に保つ事が重要となります。
粗大粒子を含んだCMPスラリーを用いると、シリコンウェハーに傷をつける原因となりますし、粒子径にムラがあると研磨効率が悪化してしまいます。半導体の生産工程では、凝集粒子による歩留まりの悪化を防ぎ、また濃淡ムラによる研磨効率の悪化を防ぐため、CMPスラリーのフィルタリングと、リアルタイムモニタリングを行うことが非常に重要となります。
このページでは、個数カウント粒度分布測定装置AccuSizerを用いたCMPスラリーモニタリングと粗大粒子管理のアプリケーションについてご紹介します。
Accusizerは単一の粒子光学サイジング(Single Particle Optical Sizing:SPOS)の原理を利用した、高分解能粒度分布測定装置です。
粒度分布の形状を仮定することなく、一つ一つの粒子に対してサイズと大きさを判別しモニタリングが可能です。この技術によって、僅かな混入でも、製品の歩留まりに影響する、CMPスラリー中のLPCの管理を行うことができます。
AccuSizerシリーズは、世界中の半導体工場でLPC管理の標準機として用いられています。
CMPスラリーの製造プロセスにおいて、形成されたLCPをフィルタリングし、CMPスラリーから除去する工程があります。ここで使用されるフィルターの寿命が損なわれると、うまくフィルタリングが行われず、欠陥を引き起こす原因となってしまいます。
粒度分布のテイル部分に存在するLCPをモニター・定量することができれば、頻繁なフィルター交換の必要もなく、時間と費用を有効活用できます。
AccuSizerは、粒度分布のテイル部分のLPC(通常、>1.0μm)に対して、レーザー回折の600倍以上の検出感度を有し、レーザー回折では見逃してしまう微量のLPCを検出します。
図1は、AccuSizerでCMPスラリーのフィルタリング前後のテイル部分の粗大粒子を測定した結果です。
フィルタリング前のCMPスラリーは青色で、フィルター後のCMPスラリーは赤色で表示されます。
フィルタリング前は、約20μmまでLPCが検出されていましたが、フィルタリングにより、CMPスラリー中のLPCは劇的に減少しています。
スラリー中の粗大粒子を定量し、プロセス上の問題解決につながる、AccuSizerの能力が示されています。
AccuSizerで、CMPスラリー中のLPCを減少させるための最適なフィルターを決定するための実験結果を示しています。
スラリーをフィルタリングなしに循環し、その後10、5、及び1μmのフィルターを通しました。
10μmフィルターには、LPCを減らす効果がありませんでしたが、より小さな目のフィルターを使用するとCMPスラリー中のLPCが減少しています。
今回はフィルター径のみをファクターとして変化させましたが、実際にはフィルターの材質・種類・径などのファクターを変化させながら、最適なフィルターを選択してくことになります。
AccuSizerはまた、高濃度のCMPスラリーがウエハーを傷つけるの防ぐ目的で、オンラインモニターとしても使用することができます。また、オンラインシステムはフィルターの交換時期を決定するためにも使用され、フィルターの保守スケジュールを最適化することで、コストを節約できます。
AccuSizer オンラインのデータを示します。ここでは、フィルター交換をLPCカウントに基づいて、約24時間ごとに行っている様子を示しています。
CMPスラリーを用いるラインでは、サンプリングの位置も管理すべきファクターです。
左の図は、あるタンクの上部と下部から連続サンプリングしたデータです。
中央で、サンプリング位置を上部から下部に変更しました。タンクの上部か下部かによって、CMPスラリーが分離しています。
同じ製品を用いてもラインを上から引くか、下から引くかで、研磨効率が変わってしまいます。